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掛取引とは?仕組み・流れ・仕訳・リスクまでをわかりやすく解説

掛取引とは?仕組み・流れ・仕訳・リスクまでをわかりやすく解説

事業を営む場合、小売や飲食以外では「即時現金取引」はあまりありません。「〇日締め翌月△日払い」と言う取引をすることが多くなります。

売買の都度、現金で支払いしていては、時間や手間、コストがかかってしまい非効率的です。そのため「掛取引」と言う方法で商品やサービスの売買を行います。

今回は商売の基本である「掛取引」について、その仕組み、流れ、仕訳方法、リスクなど多岐にわたって解説していきます。

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目次

掛取引とは商品やサービスの代金を後払いにする取引形態

まず掛取引とはどのようなものなのか、掛取引の定義について解説していきます。「知っている」「当たり前」と思われるかもしれませんが、基本的なことについてしっかり押さえておいてください。

それぞれ順に解説します。

掛取引の基本と契約から入金までの流れを説明

掛取引とは、商品やサービスの代金を受け取る時点ではなく、一定期間後に支払うことを前提とした取引形態です。主に企業間取引で用いられ、現金の即時決済に比べて取引の柔軟性を高め、資金繰りを調整しやすくするメリットがあります。

掛取引の基本は、まず売買契約の締結です。契約には商品の種類・価格・納期・支払条件(締め日や支払期日)などを明確に定めます。契約成立後、売手は商品やサービスを販売し、納品書や請求書を発行します。請求書には支払期日や振込先が記載され、買手はそれに基づき後日代金を支払います。

支払期日までの期間は「支払いサイト」と呼ばれ、この間、売手は売掛金として資産計上します。買手はその期間中に資金を準備し、期日までに指定口座へ入金します。売手は入金確認後、債権の消込処理を行い、取引が完了します。

このように、掛取引は契約締結から商品提供、請求書発行、支払、入金確認まで一連の流れが体系化されており、取引の透明性と管理が重要です。適切な管理を行うことで、企業の資金繰りや信用取引の円滑化に寄与します。

手形取引やクレジットカード決済との違いを解説

掛取引、手形取引、クレジットカード決済は、企業や個人が商品・サービスの代金を支払う際の代表的な方法ですが、それぞれ特徴やリスク、資金化のタイミングが異なります。

掛取引は前述の通り、商品やサービスの提供後、一定期間経過した後に代金を受け取る後払い方式です。取引は契約書や請求書に基づき行われ、入金確認まで売掛金として管理されます。メリットは柔軟な支払いが可能で、買手の資金繰りに対応できる点です。一方、支払遅延や未回収のリスクは売手が負う必要があります。

手形取引は、掛取引と同様に後払いですが、支払手段として手形を用います。手形は法律上の支払保証となるため、掛取引に比べて回収不能リスクが低く、金融機関を通じた割引による資金調達(手形割引)も可能です。ただし手形管理の手間や不渡りリスクが存在します。

クレジットカード決済は、主に小売やサービス業で利用され、買手がカード会社を介して即時に支払いを行い、売手は後日カード会社から入金を受けます。メリットは現金管理や回収業務が不要で、決済の確実性が高いことです。カード会社へ支払う手数料が発生する点や高額取引での制限がある点がデメリットです。

下表に主な違いを整理します。

取引形態支払タイミング入金保証手間・管理リスク
掛取引後日(契約・請求書に基づく)なし(売掛金管理必要)請求・入金管理必要未回収リスク
手形取引後日(手形期日)法的保証あり手形発行・管理必要不渡りリスク
クレジットカード即時(カード会社経由)カード会社が保証入金管理簡単手数料発生、高額利用制限

このように、掛取引は資金繰り柔軟性が高いもののリスクが自己負担、手形取引は回収保証が強く資金化手段もあるが手形発行や管理に手間がかかる、クレジットカード決済は管理負担が少なく確実性が高いが手数料がかかる、と言う特徴があります。企業は取引先や資金繰り状況に応じて適切な決済手段を選ぶことが重要です。

掛取引のメリットは販売機会の拡大と資金繰りの柔軟化

掛取引の最大のメリットは、販売機会の拡大と資金繰りの柔軟化です。後払いを前提とすることで、買手は即時の現金支払いを求められず、資金が不足していても取引が可能になります。その結果、取引先の選択肢が広がり、販売のチャンスを増やせます。

また、売手にとっても、掛期間中に入金までの資金計画を立てやすくなるため、短期的な資金不足に柔軟に対応できます。ただし、未回収リスクや支払遅延の管理は必要で、適切な信用管理が前提となります。

それぞれ順に解説します。

現金がなくても取引できるため商機を逃しにくい

掛取引の大きなメリットの一つは、現金が手元になくても取引を進められる点です。買手は商品やサービスを受け取りながら、一定期間後に代金を支払えるため、資金不足であっても必要な仕入やサービス利用が可能になります。この仕組みにより、買手は手元資金の状況に左右されず、商機を逃しにくくなります。

また、売手にとっても、掛取引を受け入れることで取引先の幅を広げやすくなり、売上拡大につながります。特に新規顧客や資金繰りが厳しい中小企業にとっては、取引のハードルが下がるため、商談の成立率が高まるメリットがあります。

さらに、一定の支払いサイトを設定することで、買手は資金の準備期間を確保でき、売手も売掛金として管理することで入金計画を立てやすくなります。ただし、売手側は支払遅延や未回収のリスクを伴うため、信用管理や請求管理を適切に行うことが重要です。掛取引は、現金に依存せず商機を逃さない柔軟な取引手段として、多くの企業で活用されています。

取引先との信頼を深め長期的な関係を築ける

掛取引のもう一つの大きなメリットは、取引先との信頼関係を深め、長期的なビジネス関係を築ける点です。掛取引では、代金を即時に受け取らず、一定期間後に支払いを受ける仕組みを採用するため、売手は買手の信用を前提に取引を行います。

この信用を基盤とした取引は、相手企業に対して信頼感を示すことになり、双方の関係強化につながります。また、買手は掛期間中に資金を効率的に運用できるため、安心して取引を継続しやすくなります。結果として、売手は単発の取引にとどまらず、継続的な取引やリピートした注文の増加が期待できます。

さらに、掛取引を通じて得られる相手の支払履歴や信用情報は、今後の取引条件の設定やリスク管理にも役立ちます。信頼関係が構築されることで、価格交渉や納期調整も円滑になり、双方にとって安定したビジネス環境になります。このように、掛取引は単なる代金後払いの手段にとどまらず、取引先との長期的な信頼関係を築くための重要な方法にもなり得ます。

経理処理をまとめられることで業務効率が上がる

掛取引は、経理処理をまとめて管理できる点でも業務効率の向上に寄与します。掛取引では、代金の支払いが即時ではなく、請求書発行日や締め日、支払期日を基準に一括して管理されます。そのため、日々の小口現金管理や個別の回収作業を分散して行う必要がなく、請求書や入金確認をまとめて処理できるようになります。

売掛金や買掛金として会計帳簿に整理することで、資金の流れを一元管理でき、経理担当者の作業負担を軽減できます。また、月末締めや期末処理の際も、取引ごとの個別処理が少ないため、帳簿作成や財務報告の効率が高まります。さらに、定期的な入金スケジュールに沿って処理を行うことで、入金遅延や未回収の把握が容易になり、資金管理の精度も向上します。

結果として、経理業務の効率化だけでなく、キャッシュフロー管理の正確性も高まり、企業全体の財務運営にプラスとなります。

掛取引のデメリットは貸倒リスクと管理コストの増加

掛取引のデメリットは貸倒リスクと管理コストの増加を中心にいくつか指摘できます。会計上「売上」を計上してから、実際に口座へ入金があるまで時間がかかります(それを支払いサイトと言います)。その数十日の間に売掛先に何かがあれば、売掛金を回収できなくなってしまいます。

こうなると、売掛債権は「不良債権」に変わり、「資産」から「負債」となってしまいます。負債化すれば、もはや利益にはならず、どのように「損切り」するかのステージになってしまいます。

便利だと思われている掛取引ですが、そのデメリットについてもしっかり押さえておきましょう。

それぞれ順に解説します。

支払い遅延や倒産で売掛金が回収できないリスク

掛取引の最大のデメリットは、支払遅延や取引先の倒産によって売掛金が回収できなくなるリスクです。後払いを前提とするため、売手は代金を即座に受け取れず、入金までの間、資金が拘束されます。もし買手が資金繰りに行き詰まったり、倒産した場合、代金の回収が困難になり、売手の資金繰りに深刻な影響を及ぼす可能性があります。

また、支払い遅延が頻発すると、売上計上後に入金が滞るため、キャッシュフローの管理が難しくなり、短期的な運転資金不足に直結します。さらに、売掛金の回収業務や督促対応に時間と労力がかかり、経理や営業の業務負担が増大する点もデメリットです。

そのため、掛取引を導入する際は、取引先の信用力を事前に確認し、必要に応じて取引限度額を設定するなど、リスク管理が不可欠です。掛取引は取引拡大や商機の確保に有効ですが、回収リスクを伴うことを十分に認識し、適切な管理体制を整えることが重要です。

与信管理や債権回収に手間とコストがかかる

掛取引のもう一つのデメリットは、与信管理や債権回収に手間とコストがかかる点です。後払い取引では、売手が取引先の信用力を事前に評価し、支払能力や経営状態を確認する与信管理が欠かせません。この作業には時間と人員が必要で、特に新規取引先や複数の取引先がある場合は、情報収集や信用調査のコストが増加します。

また、売掛金の回収業務も負担になります。支払い遅延が発生した場合、督促状の送付や電話連絡、場合によっては法的手段の検討など、回収活動に時間と費用がかかります。

これに加えて、売掛金の管理システムや帳簿管理、入金確認作業などの経理作業も必要となり、企業の総合的な業務負担が増えることになります。こうした手間やコストは、特に中小企業にとっては経営効率に大きく影響するため、掛取引を導入する際は、与信管理体制の整備や効率的な債権回収方法の導入が重要です。

掛取引の比率が高いと資金繰りが悪化しやすい

掛取引の比率が高い場合、企業の資金繰りが悪化しやすくなる点もデメリットとして挙げられます。掛取引では、商品やサービスを提供した時点で売上は計上されますが、実際の代金は後日入金されるため、入金までの期間中は資金が手元にありません。そのため、取引全体に占める掛取引の割合が高いと、売上はあっても現金収入が不足し、仕入れ代金や人件費、経費の支払いに必要な資金が一時的に滞るリスクが増します。

「黒字倒産」は売上があるのに売掛金を回収できず、その間に経費や買掛金を支払うキャッシュがなくなり不渡りを起こすことで生じます。

特に、買手の支払遅延や未回収が発生すると、キャッシュフローが圧迫され、短期的な運転資金不足に直結します。資金繰りの悪化は、追加の借入や支払い条件の見直しなど、経営判断に影響を与える場合もあります。

そのため、掛取引の比率が高い企業では、売掛金の回収スケジュールを管理し、必要に応じて手形割引やファクタリングなどで現金化するなど、資金繰り対策を講じることが重要です。適切な管理がなければ、掛取引の利便性が逆に経営リスクとなる可能性があります。

掛取引の会計処理と仕訳の基本をわかりやすく解説

掛取引は売掛金や買掛金が発生したことが分かるように仕訳しなければなりません。10月1日に売上があっても、入金が11月30日なら「発生主義」で仕訳が必要になります。

11月30日に売上があったわけではなく、あくまで取引で売買が成立した日が売上計上日になります。ここでは売掛金と買掛金について仕訳方法を中心に解説していきます。

それぞれ順に解説します。

売掛金の仕訳例と入金確認までの対応

掛取引における経理処理では、商品やサービスを提供した時点で売掛金として計上し、入金確認まで管理します。

今回は「A社がB社に100,000円を掛取引して売却したケース」を考えます。

まず、商品を販売し請求書を発行した時点での仕訳は以下の通りです。

借方貸方
売掛金 100,000円売上 100,000円

この仕訳により、まだ入金されていない代金を資産として計上します。買手が期日通りに支払うまでの間、売掛金として帳簿上で管理します。入金日には、現金や普通預金に振り替える仕訳を行います。例えば、銀行振込で入金があった場合の仕訳は以下です。

借方貸方
普通預金 100,000円売掛金 100,000円

この処理により、売掛金が消込され、入金が確認されたことを帳簿上で明確にします。また、入金遅延が発生した場合は、督促状の送付や回収状況の確認を行い、必要に応じて貸倒引当金を計上するなどリスク管理も実施します。掛取引では、売上計上と入金確認を正確に区分し、売掛金の管理を徹底することで、資金繰りや経理業務の透明性を保つことが重要です。

買掛金の仕訳例と支払い処理のポイント

掛取引における買掛金は、仕入やサービスの受領後、代金を後日支払う義務を記録する勘定科目です。経理処理では、まず仕入時に買掛金として計上し、支払時に現金や預金から振り替えます。

仕入れ時の仕訳例「A社がC社から原材料を100,000円で仕入した」ケースの仕訳は以下になります。

借方貸方
仕入 100,000円買掛金 100,000円

この仕訳で、まだ支払っていない代金を負債として計上します。


期日になり、銀行振込で支払った場合の仕訳は以下です。

借方貸方
買掛金 100,000円普通預金 100,000円

この処理により、負債として計上していた買掛金が消込され、現金の支出が反映されます。

売掛金と買掛金を相殺処理する際の注意点

売掛金と買掛金の相殺処理は、同一の取引先に対して売掛金と買掛金が同額ある場合に、両者を相殺して帳簿上の債権・債務を整理する処理です。便利な手法ですが、実務ではいくつか注意点があります。

契約や同意の確認

相殺には、取引先との合意が必要です。勝手に相殺すると問題となる場合があるため、事前に書面やメールで確認しておくことが重要です。

金額や期日の一致

相殺対象の売掛金・買掛金の金額、発生日、取引内容を正確に照合する必要があります。部分相殺の場合は、残額の管理も明確にしておくことが求められます。

相殺処理の仕訳例は以下の通りです。「売掛金10万円と買掛金10万円を相殺する場合」

借方貸方
売掛金 100,000円売上 100,000円

この仕訳で、売掛金と買掛金の両方が帳簿上消込されます。

会計・税務上の注意

相殺処理は会計上は債権債務の整理ですが、消費税や売上計上のタイミングに影響する場合があります。特に異なる課税期間の取引を相殺する場合は、税務上の取り扱いを確認してください。

残高管理の徹底

相殺後も、取引先ごとの残高や未決済分を正確に管理することが重要です。誤った相殺は、入金や支払いの確認ミスにつながることがあります。

売掛金と買掛金の相殺は効率化に有効ですが、事前確認・仕訳の正確性・正しい税務処理の3点を押さえることが不可欠です。

掛取引を安全に進めるための管理とリスク回避策

掛取引は現金決済ではないため、回収できない可能性があります。高額な掛取引をして回収できなければ、貸倒で倒産の危機になります。

また回収できる売掛先でも回収サイト(回収までの期間)が長いと、「売上はあるのに現金が回収できない=キャッシュがない」ことになり、その間に買掛金や経費の支払いができなくなり「黒字倒産」のリスクもあります。

掛取引にはメリット、デメリットともにあるのは上記の通りですが、掛取引を安全に進めるための管理とリスク回避策をしっかり考えれば、メリットを残しながらデメリットを減らせます。

どうすれば良いのか、検討していきましょう。

それぞれ順に解説します。

掛取引の割合を管理して資金バランスを健全に保つ

掛取引を安全に進めるには、取引先の信用管理と資金バランスの維持が重要です。まず、掛取引の割合を管理することで、売上に占める後払い取引の比率を適切にコントロールできます。掛取引比率が高すぎると、売上は計上されても現金収入が不足し、仕入れ代金や経費の支払いが滞るリスクが増すため、資金繰りの健全性を保つために一定の上限を設定することが有効です。

次に、取引先ごとの与信管理を徹底します。新規取引先や信用情報に不安がある場合は、取引開始前に信用調査を行い、必要に応じて取引限度額を設定します。既存取引先についても定期的に支払履歴を確認し、支払遅延の兆候があれば事前に対応策を講じます。また、売掛金の管理体制を整え、請求書発行や入金確認を確実に行うことで、未回収リスクを低減できます。

さらに、リスク回避策として、部分的に前受金や手形、ファクタリングなどの現金化手段を併用することも有効です。これにより、万一の支払遅延や倒産リスクに備え、資金繰りを安定させられます。掛取引は便利な取引形態ですが、適切な管理とリスク回避策を講じることで、企業の財務健全性を維持しつつ商機を活かすことが可能です。

信用調査を行い取引先の支払い能力を確認しておく

掛取引を安全に運用するためには、事前の信用調査が欠かせません。取引先の支払い能力や財務状況を把握しておくことで、未回収リスクや支払遅延の発生を予防できます。具体的には、企業の決算書などを確認し、支払能力や経営の安定性を評価します。必要に応じて、信用調査会社や銀行、商工会議所などの公的・民間情報も活用することで、より客観的な判断が可能です。

信用調査の結果をもとに、取引限度額や掛期間を設定することが重要です。新規取引先の場合は、初回は小口取引にとどめる、分割納品や前払いを併用するなど、段階的な取引拡大もリスク回避につながります。また、既存取引先についても、定期的に信用状況を確認し、経営状況の変化や支払遅延の兆候を早期に把握することで、柔軟に取引条件を見直せます。

こうした信用調査と管理を徹底することで、掛取引の利便性を維持しつつ、売掛金回収リスクを最小限に抑え、企業の資金繰りや経営の安定性を確保することが可能です。

売掛保証やファクタリングを利用して貸倒を防ぐ

掛取引に伴う未回収リスクを軽減するためには、売掛保証やファクタリングの活用が有効です。これらの仕組みを利用することで、取引先の支払遅延や倒産による売掛金の未回収リスクを企業側が負わずに済み、資金繰りの安定化につながります。

売掛保証は、取引先が支払不能になった場合でも、保証会社が売掛金を代位弁済する制度です。「支払不能保険」のようなイメージです。売手は取引ごとに保証料を支払うことで、万一の貸倒リスクを事前に回避できます。特に新規取引先や信用力に不安のある企業との掛取引に有効です。

ファクタリングは、売掛金を専門業者に譲渡して現金化する仕組みです。売掛金を早期に資金化できるため、資金不足による運転資金リスクを回避できるほか、入金遅延の影響を受けずにキャッシュフローを安定させられます。さらに、ノンリコース型のファクタリングを利用すれば、取引先の倒産による未回収リスクもファクタリング会社が負担します。

これらの方法を組み合わせることで、掛取引の利便性を維持しつつ、貸倒リスクを最小限に抑えることが可能です。企業は信用管理や資金管理と併せて活用することで、安全かつ効率的な取引環境を整えられます。

取引条件を明記した契約書でトラブルを未然に防ぐ

掛取引を安全に進めるためには、取引条件を明記した契約書の作成が重要です。口約束は絶対に避けてください。契約書には、商品の内容や数量、納期、価格、支払条件(締め日や支払期日)、遅延時の対応などを明確に記載します。これにより、売手と買手の双方が取引条件を正確に理解でき、後々の誤解やトラブルを未然に防げます。

特に掛取引では、代金の支払いが後日となるため、支払期日や振込先の明示は欠かせません。加えて、遅延利息や催促手続きに関する条項を契約書に含めておくと、万一支払遅延が発生した場合も法的根拠に基づいて対応できます。契約書は対面書面だけでなく、電子契約(クラウドサインなど)を活用することで、迅速かつ安全に締結できます。

さらに、契約書を基に請求書や納品書の発行を行うことで、取引内容の確認や帳簿管理も容易になります。契約書で条件を明確化しておくことは、信用取引に伴うリスクを減らすだけでなく、企業間の信頼関係を強化し、長期的な取引の安定にもつながります。

契約書を作らない取引先には、やり取りのメールを保存する、チャットワークなどの画面のスクショを取るなどして、契約書の代わりに掛取引条件を主張できるようにしてください。スクショを取る場合は、日時も含めて画面を保存してください。(パソコン推奨、右下のここもスクショに含める)。

掛取引に関するよくある質問に回答

掛取引を行う際に、多くの方が疑問に感じる内容について、ここでQ&A形式で解説します。疑問点を解決して、掛取引をどうするのか、ぜひ考えてください。掛取引のメリットやデメリットと合わせて、その可否を判断すると良いでしょう。

掛取引の割合が100%ですが改善した方がいい?

取引手段は分散した方が良いですが、業種や仕事内容によっては、現金払い、前払い、都度払いが難しいこともあり得ます。改善できればした方が良いのですが、難しい場合(実際には難しいことが多い)は「1社だけとの掛取引」を見直してください。

A社だけと仕事をしていて、そのA社と掛取引100%だと、A社から入金が遅れた場合収入がなくなります。

特定の1社との掛取引の割合が売上の100%の状況は、取引先(A社)に全面的に依存している状態を意味します。一見すると取引先との信頼関係が強いように見えますが、資金繰りの面ではリスクが高いと言えます。売掛金は実際に入金されるまで現金化されないため、入金遅延や取引先の倒産が発生すると、資金ショートに直結する恐れがあります。黒字倒産も容易に起き得る状況です。

健全な経営を維持するためには、特定の1社(A社)との掛取引の割合を一定程度抑え、B社やC社など取引先を分散してください。A社、B社、C社と取引していれば、3社全部支払い遅延になることはないはずです。リスク分散を図ることが望ましいです。

また、新規取引先や信用情報が不十分な相手との取引では、信用調査を行い、取引条件を慎重に設定することも重要です。また、売掛金の回収を早めるために、支払いサイトの短縮交渉や、売掛保証・ファクタリングの活用も効果的です。

掛取引が100%の状態が続くと、資金繰りに余裕がなくなり、仕入れや設備投資などの経営判断に支障をきたす可能性もあります。現金回収比率を上げ、キャッシュフローを安定させる方法を早めに検討しましょう。

掛取引の締め日や支払いサイトはどう決めるべき?

掛取引の締め日や支払いサイトの設定は、取引先との信頼関係を保ちながら、自社の資金繰りを安定させる場合非常に重要です。まず締め日は、取引量や請求書発行の事務負担を考慮して決めるのが基本です。多くの企業では「月末締め・翌月末払い」や「20日締め・翌月20日払い」といったサイクルが一般的ですが、自社の入金サイクル(売掛金の回収時期)とのバランスを考えることが大切です。

支払いサイトは、目安としては30日~60日程度が多いですが、取引先の業種や規模によって柔軟に設定することが求められます。長い方が取引先にとってはありがたいのですが、みなさまにとっては不安な要素となります。60日を超える支払いサイトは建設業など構造的に時間がかかる(建設→検品→検収)業種以外は避けてください。

新規取引の際には、取引基本契約書で明確に取り決めておくとトラブル防止につながります。

また、自社の資金繰りを可視化し、売掛金の入金日と買掛金の支払日を比較してキャッシュフロー計算書を作成し俯瞰してみましょう。入出金のバランスが悪い場合は、支払いサイトの見直しや、支払条件の交渉、ファクタリングなどを活用して改善を図りましょう。

掛取引で支払いが遅れた場合の対応はどうすべき?

掛取引で支払いが遅れた場合は、感情的にならず、冷静かつ段階的に対応することが重要です。まずは、入金予定日を過ぎた段階で、丁寧な口調で「確認のご連絡」を行いましょう。支払い忘れや事務的なミスによる遅延も多いため、最初は催促と言うより「確認」の姿勢を見せることが信頼関係を損ねないポイントです。

催促の例(これをメールやチャットで送る)

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

6月に納品しました代金(7月末までにご入金)につきまして、入金が確認できておりません。

何かのお手違いかとは存じますが、請求書に記載の期日(契約書〇条△項*)を過ぎております。

請求金額 ¥  - 〇〇〇〇〇〇円

請求書は6月30日にメールで送付しています。

大変お手数ですが、ご確認いただきたくよろしくお願い申し上げます。

なお、行き違いでご送金頂いただいておりました場合には何卒ご容赦ください。

取り急ぎ、ご連絡まで。

それでも入金がない場合は、次のステップとして「正式な督促書」を内容証明付郵便送付します。この際には、請求金額・支払期限・振込先を明記し、遅延が続く場合の対応(利息請求や取引停止、法的措置など)をやんわりと伝えます。メールよりも書面で残すことで、後の法的対応にも備えられます。なお、この段階になると、以後この取引先との仕事は継続できなくなる可能性が高くなります(内容証明を送られたら今までの関係は維持できません)。

取引先に一時的な資金難がある場合は、分割払いの提案や支払い猶予など、柔軟な対応を検討しても良いでしょう。ただし、何度も遅延が続くようなら、取引条件の見直しや売掛保証・ファクタリングの利用などでリスクを抑えることが大切です。

それでもダメな場合は、債権回収に強い弁護士に相談して、法的措置を取ります。売掛金回収の時効は5年です。60万円までの売掛金の場合、弁護士を立てない「少額訴訟」と言う方法もあります(弁護士費用がかからない)。

いずれにしても法的措置は最後の手段ですが、あまり様子見していると取引先が倒産し1円も回収できずに終わってしまう可能性もあります。タイミングと回収方法の選択が重要になります。

ここでポイントとなるのが、「迅速な確認」「段階的な対応」「記録の保全」です。いきなり裁判に訴えるのではなく、誠実に対応しつつ、徐々に強い対応に切り替えます。再発防止のための取引管理体制も整備しておきましょう。

運営企業

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