IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者ITツールを活用して業務効率化や生産性向上を実現するための政府支援策です。本記事では、2023年(令和5年)度のIT導入補助金について、対象となるツールや対象事業者の条件を詳しく解説します。
デジタル化が進む現代において、助成金を活用することで、企業は競争力を向上させるだけでなく、働き方改革や業務効率化にも繋がります。この機会にIT導入補助金の詳細を知り、ご自身のビジネスに役立てましょう。
IT導入助成金の対象事業者や対象ツール、各種スケジュールから申請方法まで解説していますので、お役立て下さい。
IT導入補助金とは?

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者が情報技術(ITツール)を活用したビジネス改善や生産性向上を図るために、政府が提供する補助金の一種を指します。
補助金額 | 30〜450万円 |
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補助率 | 1/2まで |
企業がITシステムやソフトウェア、ハードウェアを導入・改善する際の費用を政府が一部補助することで対象事業者の負担費用が減り、競争力向上や労働環境の改善を促すことを目的としています。
サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)が定める「中小企業や小規模事業者(=IT導入補助金の対象となる事業者)」の業種や定義は次の通りです。
中小企業
業種分類 | 定義 |
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製造業、建設業、運輸業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社 常時使用する従業員の数が300人以下の会社 常時使用する従業員の数が300人以下の個人事業主 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社 常時使用する従業員の数が100人以下の会社 常時使用する従業員の数が100人以下の個人事業主 |
サービス業※1 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社常時使用する従業員の数が100人以下の会社 常時使用する従業員の数が100人以下の個人事業主 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社 常時使用する従業員の数が50人以下の会社 常時使用する従業員の数が50人以下の個人事業主 |
ゴム製品製造業※2 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社 常時使用する従業員の数が900人以下の会社 常時使用する従業員の数が900人以下の個人事業主 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社 常時使用する従業員の数が300人以下の会社 常時使用する従業員の数が300人以下の個人事業主 |
旅館業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社 常時使用する従業員の数が200人以下の会社 常時使用する従業員の数が200人以下の個人事業主 |
その他の業種(上記以外) | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社 常時使用する従業員の数が300人以下の会社 常時使用する従業員の数が300人以下の個人事業主 |
医療法人、社会福祉法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
学校法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | 常時使用する従業員の数が100人以下の者 |
中小企業団体※3 | 上記の業種分類に基づき、記載の従業員規模以下の者 |
特別の法律によって設立された組合又はその連合会 | 上記の業種分類に基づき、記載の従業員規模以下の者 |
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | 上記の業種分類に基づき、記載の従業員規模以下の者 |
特定非営利活動法人 | 上記の業種分類に基づき、記載の従業員規模以下の者 |
- ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く
- 自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工場用ベルト製造業を除く
- 中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体
小規模事業者
業種分類 | 定義 |
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商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
参考:IT導入補助金2023 交付規約
IT導入補助金2023 公募要領
上記のIT導入補助金の対象となる中小企業・小規模事業者等の各業種分類、定義は執筆者がわかりやすくまとめたものになります。お申し込みの際は今一度「IT導入補助金について」のページをご確認下さい。
IT導入補助金の概要
IT導入の補助対象は、下記4つの枠が設けられています。
- 通常枠(A類型・B類型)
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入類型
- 複数社連携IT導入類型
利用する枠によって、補助枠や補助率、導入するITツールの機能要件や補助対象が異なってきます。ご自身の事業に合った枠を選択できるよう、それぞれの枠について見ていきましょう。
通常枠(A類型・B類型)
通常枠は中小企業や個人事業主向け「ITツール導入」の補助制度です。
種類 | A類型 | B類型 |
---|---|---|
補助金額 | 5万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
補助対象 | ・ソフトウェア購入費 ・クラウド利用料※1 ・導入関連費 | ・ソフトウェア購入費 ・クラウド利用料※1 ・導入関連費 |
賃上げ目標 | 加点 | 必須 |
申込み締切日※2 | 2023年4月25日 | 2023年6月2日 |
- 最大2年分
- 申込み締切は締切日の17:00まで(予定)
通常枠はA類型とB類型の2種類が用意されており、違いは主に補助金額と賃上げ目標の加点と必須な点です。
通常枠のA類型とB類型の違い
補助金額に関しては、A類型が5万~150万円未満に対し、B類型は150万~450万円以下と補助金額が多くなっています。また、賃上げ目標とは賃上げ計画書の表明書を記載し、経済産業省または他省庁へ提出することを指します。
賃上げ目標が必須のB類型は、賃上げ目標の計画表明書を国に提出する義務があり、賃上げ目標が加点のA類型は、賃上げ目標の計画表明書を国に提出する義務はありません。
賃上げは「中小企業向けの賃上げ促進税制の概要」に基づき、前年度と比べて1.5%以上の増加が適用用件となります。従業員を雇っていない場合、1.5%の賃上げは役員報酬にかかることを覚えておきましょう。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃のリスク軽減を目的とした補助制度です。
補助金額 | 5万円~100万円 |
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補助率 | 1/2以内 |
補助対象 | サービス利用料※1 |
申込み締切日※2 | 1次締切:2023年4月25日 2次締切:2023年6月2日 |
- 最大2年分
- 申込み締切は締切日の17:00まで(予定)
補助対象は、独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊」のサービスリストに記載されているITツールに限られます。
デジタル化基盤導入類型
デジタル化基盤導入類型は、企業間取引のデジタル化を支援する補助制度です。
補助金額 | (下限なし)~350万円 |
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補助率※1 | 1機能以上:3/4以内 2機能以上:2/3以内 |
補助対象 | ・ソフトウェア購入費 ・クラウド利用料※2 ・導入関連費 |
申込み締切日※3 | 1次締切:2023年4月25日 2次締切:2023年5月16日 3次締切:2023年6月2日 |
- 会計・受発注・決済・ECのうち機能要件によって異なる
- 最大2年分
- 申込み締切は締切日の17:00まで(予定)
デジタル化基盤導入類型の補助対象となるITツールは次の通りです。
- 会計ソフト
- 受発注ソフト
- 決済ソフト
- ECソフト
デジタル化基盤導入類型はホームページ制作も補助対象になる他、パソコンを始めとする「ハードウェア購入費」がプラスで補助対象となっています。
ハードウェア購入費

対象ハードウェア | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|
・PC ・タブレット ・プリンター ・スキャナー ・複合機 | 1/2以内 | 10万円 |
・レジ ・券売機等 | 1/2以内 | 20万円 |
複数社連携IT導入類型
複数社連携IT導入類型に関しましては、上記で紹介した「通常枠(A・B類型)」「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」と比較して、制度の概要に一部異なる点があります。
複数の中小・小規模事業者が連携してITツール及びハードウェアを導入することにより、地域DXの実現や、生産性の向上を図る取組に対して、複数社へのITツールの導入を支援するとともに、効果的に連携するためのコーディネート費や取組への助言を行う外部専門家に係る謝金等を含めて支援するものです。
引用元:デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)について
複数社連携IT導入類型は、商工団体や複数の事業者によって作られた法人・団体等が補助対象事業者となっています。詳細は「複数社連携IT導入類型の補助対象について」を参考にして下さい。
IT導入補助金に関するよくある質問
- ホームページ制作にIT導入補助金を利用できますか?
-
はい、可能です。デジタル化基盤導入類型の対象には「会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト」が含まれています。決済を含むホームページの作成や、ECサイト制作は補助対象になると考えて良いでしょう。
しかし、通常枠(A類型・B類型)については、ホームページ制作の補助対象外となっています。
- パソコン購入でIT導入補助金を利用できますか?
-
利用可能です。「デジタル化基盤導入類型」にはパソコンも対象のハードウェア購入費が含まれています。補助上限額は10万円、補助率は1/2以内でIT導入補助金を利用してPCを購入可能です。
- IT導入補助金は個人事業主でも申請できますか?
-
はい、個人事業主も対象です。
- IT導入補助金の申請は支援業者に依頼したほうがいいですか?
-
IT導入補助金の申請は複雑です。手間を省きたい方や自身がない方は、IT導入支援業者や、IT導入補助金の申請代行が可能な社労士に依頼するのも良いでしょう。
- IT導入補助金の申請に伴い事前準備が必要なものはありますか?
-
IT導入補助金の申請に伴い「gBizID」が必須となります。
IT導入補助金の申請方法・手順

IT導入補助金の交付申請にはgBizIDプライムのアカウントが必須です。「gBizID公式サイト」にアクセスし、ご自身のアカウントを発行しましょう。なお、gBizIDプライムのアカウント発行までには2週間程度かかります。

続いて独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTIONの宣言」が必要になります。
「SECURITY ACTION」は中小企業自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。安全・安心なIT社会を実現するために創設されました。
引用元:SECURITY ACTIONとは? : SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言
gBizIDプライムのアカウントを取得せずとも、SECURITY ACTIONの宣言は可能ですので、gBizIDプライムのアカウント発行をお待ちの間に済ませておきましょう。
宣言方法は「SECURITY ACTIONとはの新規申し込み手順」に沿って行います。

最後に、STEP:1で作成したgBizIDプライムアカウントを用いて、中小企業庁が実施するみらデジの公式サイトにログインして「経営チェック」の実施を行います。
上記を終えたら再度「gBizIDへログイン」し、申請マイページから交付申請の作成を開始できます。