リースバックとは、保有する不動産を売却したうえで賃貸借契約を結び、同じ物件を引き続き使用する仕組みです。個人が自宅を売却して住み続ける方法として知られていますが、法人も本社ビルやオフィス、店舗、工場などの事業用不動産を対象に利用できます。
法人がリースバックを利用する利点は、事業拠点を移転せずにまとまった資金を確保できる点にあります。売却で得た資金は運転資金や借入金の返済、設備投資に充てられ、資金繰りや財務状況の改善を目的として活用されることもあります。
一方で、不動産の所有権を失うため、売却後は賃料の支払いが必要になります。売却価格や賃貸条件、将来の買い戻し条件を確認したうえで、自社に適した方法かどうかを判断しなければなりません。
本記事では、法人向けリースバックの仕組みと活用方法、メリット・デメリット、利用する際の注意点を解説します。
リースバックは法人でも利用でき事業用不動産を活用した資金確保が可能
リースバックは個人の自宅に限らず、法人が所有する事業用不動産でも利用できます。法人が本社ビルやオフィス、店舗、工場などを売却し、買主と賃貸借契約を結べば、売却代金を受け取りながら同じ不動産を使い続けられます。
通常の不動産売却では、売却後に物件を明け渡さなければなりません。リースバックはこの前提を外します。事業拠点を移転せずに資産を現金化できるため、営業や生産活動を止めずに資金を確保できます。
法人向けリースバックを理解するうえで、まず押さえておきたい点は次の3つです。
それぞれ順に解説します。
法人向けリースバックは不動産を売却後も賃貸して使い続ける仕組み
法人向けリースバックでは、自社が所有する不動産をリースバック会社などへ売却し、その後に賃貸借契約を締結します。所有権は買主へ移りますが、法人は賃料を支払うことで、売却前と同じ不動産を継続して使用できます。
自社所有の工場を通常の方法で売却すれば、原則として工場から退去し、新たな生産拠点を用意しなければなりません。リースバックなら、工場を売却して資金を得たあとも、その場所で生産活動を続けられます。
売却した不動産を将来買い戻せる契約もあります。ただし、リースバックを利用すれば必ず買い戻せるわけではありません。買い戻しを予定しているなら、契約前に可否と価格、期限を確認する必要があります。
本社ビルや店舗・工場などの事業用不動産もリースバックの対象になる
法人向けリースバックでは、本社ビルやオフィスだけでなく、店舗、工場、倉庫、社員寮など、さまざまな事業用不動産が対象となります。自宅兼事務所や法人が保有するマンションなどを取り扱うリースバック会社もあります。
本社ビルや工場のように、売却後も事業で使い続ける必要がある不動産は、リースバックとの相性がよいといえます。通常売却では移転が必要になりますが、リースバックであれば従業員の勤務地や店舗の所在地を変えずに資産を現金化できます。
ただし、すべての事業用不動産がリースバックできるわけではありません。物件の所在地や用途、資産価値によって取り扱いの可否は異なります。対象物件については、利用を検討するリースバック会社へ事前に確認しておきましょう。
不動産以外にも車両や機械設備などを対象にできる場合がある
法人向けのリースバックでは、不動産以外の資産を対象とするサービスもあります。事業者によって取り扱い範囲は異なりますが、社用車やトラックなどの車両、産業機械、工作機械、医療機器、厨房機器が対象となる場合があります。
考え方は不動産と同じです。法人が保有する資産を売却して代金を受け取り、その資産をリースすることで事業での利用を継続します。設備を手放すことで事業に支障が出る場合でも、保有資産を活用した資金確保を検討できます。
不動産のリースバックと設備・車両のリースバックでは、契約内容や取り扱う事業者が異なる場合があります。対象資産の種類だけでなく、売却価格やリース期間、リース料の条件を確認したうえで利用を判断する必要があります。
法人向けリースバックでは本社ビルや工場など幅広い不動産を活用できる
法人向けリースバックでは、本社ビルやオフィスをはじめ、店舗、工場、社員寮など、事業に使用しているさまざまな不動産を活用できます。事業上の理由から簡単には手放せない不動産を現金化したい場合に検討しやすい方法です。
ただし、保有する不動産ならどれでもリースバックに適しているわけではありません。売却後に利用する必要がない不動産であれば、通常売却の方が高く売却できたり、その後の賃料負担を避けられたりする可能性があります。リースバックを選ぶ際は、資金調達の必要性だけでなく、その不動産を今後も利用する必要があるかを基準に据えたいところです。
法人向けリースバックで活用できる代表的な不動産は、次のとおりです。
それぞれの活用方法を見ていきましょう。
本社ビルやオフィスを売却して移転せずに事業を継続する
自社で所有している本社ビルやオフィスは、法人向けリースバックの代表的な活用対象です。不動産を売却してまとまった資金を確保しながら、売却後は賃借人として同じ場所で事業を継続できます。
本社やオフィスを通常売却すると、新たな事業所の確保だけでなく、従業員の移動や取引先への案内、登記上の本店所在地の変更など、さまざまな対応が必要になる可能性があります。移転に伴う費用や業務への影響も考慮しなければなりません。
リースバックであれば、こうした移転を避けながら不動産を現金化できます。立地が事業上重要な企業や、現在の所在地を変えることによる影響が大きい企業ほど、検討しやすい活用方法になります。
店舗・工場・倉庫を売却して営業や生産活動をそのまま続ける
店舗や工場、倉庫もリースバックに活用できます。これらの不動産は単なる事業拠点ではなく、営業や生産、物流など企業活動そのものを支えているケースが多く、簡単には移転できません。
工場を移転する場合、新たな物件を確保するだけでなく、生産設備の移設や稼働停止期間への対応が必要になります。店舗であれば、立地の変更が既存顧客の来店に影響することもあります。
リースバックなら、不動産の所有権を手放して資金を確保しながら、営業や生産活動を同じ場所で継続できます。ただし売却後は賃料が発生するため、事業から得られる収益と将来の賃料負担を天秤にかけて判断することが重要になります。
社員寮や社宅を売却して保有資産を資金化する
法人が所有している社員寮や社宅も、リースバックの対象になる場合があります。売却後に賃貸借契約を結ぶことで、従業員の居住環境を維持しながら、不動産に固定されていた資金を現金化できます。
通常売却によって社員寮や社宅を手放す場合、入居している従業員の転居先を確保するなどの対応が必要になることがあります。リースバックで継続利用できれば、従業員に転居を求めることなく資産を売却できます。
社員寮や社宅の利用率が低下し、今後も保有・利用する必要性が乏しいなら、リースバックにこだわる理由はありません。通常売却を含めて比較し、自社にとって負担の少ない方法を選びましょう。
自宅兼事務所を売却して事業拠点と住居を維持する
経営者の自宅を事務所として使用している場合、自宅兼事務所をリースバックできるケースがあります。売却後も賃貸借契約によって同じ物件を利用できれば、事業拠点と住居の両方を移すことなく資金を確保できます。
自宅兼事務所については、誰が不動産を所有しているかをまず確認する必要があります。法人名義で所有している場合だけでなく、代表者個人が所有する物件に対応するリースバック会社もありますが、利用条件は事業者によって異なります。
法人と代表者個人では、契約主体や税務上の取り扱いが異なる可能性があります。自宅兼事務所を利用する際は、物件の名義を確認したうえで、リースバック会社や必要に応じて税理士などの専門家へ相談しましょう。
保有マンションや土地は通常売却との比較も行って判断する
法人が所有するマンションや土地も、状態や利用方法によってはリースバックを検討できます。ただし、売却後も自社で利用する必要がない不動産については、通常売却の方が適している場合があります。
リースバックは、買主が取得した不動産を自由に利用できないことなどから、通常売却より売却価格が低くなることがあります。加えて、売却後も利用を続ける限り賃料の支払いが必要になります。使っていない土地などを資金化するだけであれば、あえてリースバックを選ぶ利点は大きくありません。
保有不動産を資金化する際は「売却後もその不動産を使う必要があるか」を判断基準に据えましょう。継続利用が不要であれば通常売却、必要であればリースバックというように、目的に応じて比較することが大切です。
法人がリースバックを利用する主な目的は資金繰りや財務状況の改善
法人がリースバックを利用する主な目的は、保有する不動産を現金化し、事業に必要な資金を確保することです。不動産を売却する取引であるため、銀行融資とは異なる方法で資金を確保できます。
調達した資金は、日々の運転資金だけでなく、借入金の返済や設備投資、税金の支払いにも活用できます。資金不足への対応に限らず、保有資産を見直して財務状況を改善する目的でリースバックを検討することもあります。
法人がリースバックを利用する主な目的は、次のとおりです。
それぞれの場面を詳しく見ていきましょう。
不動産を売却して運転資金を確保し事業継続につなげる
売上が発生していても、入金より先に仕入代金や外注費、人件費の支払いが発生すれば、手元資金が不足することがあります。売上の入金までの期間が長い事業では、利益が出ていても資金繰りが厳しくなるケースは珍しくありません。
法人が不動産を所有していれば、リースバックによって資産を現金化し、運転資金に充てる方法があります。売却した物件をそのまま使用できるため、本社や工場、店舗など事業に必要な不動産を手放して移転する必要もありません。
ただし、売却後は毎月の賃料が新たな固定費になります。一時的な資金不足を解消できても、その後の賃料負担によって再び資金繰りが悪化しては本末転倒です。売却後の収支まで見通したうえで利用を検討する必要があります。
売却代金を借入金の返済に充てて負債を圧縮する
リースバックで得た売却代金は、金融機関などからの借入金の返済に充てることもできます。不動産という固定資産を売却すると同時に、その資金で借入金を返済すれば、貸借対照表上の資産と負債の双方を圧縮できます。
借入金が減少すれば、将来支払う利息の負担軽減にもつながります。負債の減少によって自己資本比率などの財務指標が改善する可能性もあり、単に現金を確保するだけでなく、財務体質を見直す手段としてリースバックを活用することもできます。
一方、借入金の返済後には賃料の支払いが続きます。借入返済額だけを見て判断するのではなく、リースバック後に発生する賃料も含め、資金流出がどう変化するかを確認することが重要です。
新規設備や事業拡大に必要な投資資金を確保する
新しい設備の導入や店舗の出店、新規事業への参入など、企業が成長するためにはまとまった資金が必要になることがあります。手元資金だけでは不足する場合、保有不動産をリースバックして投資資金を確保することも選択肢の一つになります。
自社工場をリースバックして売却代金を受け取り、その資金を新しい生産設備の導入に充てる方法が考えられます。工場そのものは賃借して継続利用できるため、現在の生産拠点を維持しながら新たな設備へ資金を振り向けられます。
ただし、設備投資によって必ず収益が増えるとは限りません。投資によって期待できる利益と、リースバック後に発生する賃料などの負担を比較し、資金を投じる合理性があるか検討する必要があります。
税金や社会保険料などの納付資金を確保する
法人税や消費税などの税金、社会保険料の支払いに必要な資金が不足している場合にも、リースバックによる資金確保を検討できます。不動産の売却によって得た資金は、一般的に融資のような資金使途の制約を受けないため、納税資金にも充てられます。
税金や社会保険料は支払期限が決まっており、資金不足を理由に放置することはできません。売掛金の入金時期と納付期限が合わないなど、一時的に手元資金が不足する場面では、保有資産を現金化する方法が選択肢になります。
ただし、納付資金を確保するためだけに不動産を売却することが最適とは限りません。国税には、一時に納付することで事業の継続が困難になる場合などに利用できる猶予制度があります。厚生年金保険料等についても、一定の要件を満たせば換価の猶予や納付の猶予を受けられる可能性があります。
税金や社会保険料の納付が難しい場合は、まず税務署や年金事務所などへ相談し、利用できる制度を確認したうえで資金調達の必要性を判断しましょう。
保有資産を現金化してキャッシュフローを改善する
企業が不動産などの資産を多く保有していても、支払いに利用できる現金が不足していれば、資金繰りは厳しくなります。リースバックを利用すると、事業で使い続けたい不動産を売却して現金に換えられるため、手元資金を厚くできます。
売掛金の入金までに仕入先への支払いが必要な場合や、大口案件の受注によって先行費用が増えた場合など、事業が順調でも一時的にキャッシュが不足することがあります。リースバックによる売却代金を確保できれば、こうした支払いへの対応余力が生まれます。
ただし、リースバックは一時的に現金を増やす方法であり、事業そのものの収益性を改善するものではありません。継続的に資金不足が生じているなら、その原因を確認し、収益や支出の改善とあわせて検討する必要があります。
法人がリースバックを利用するメリットは資金確保と事業継続を両立できること
法人がリースバックを利用する大きなメリットは、不動産を売却して資金を確保しながら、その不動産を引き続き事業に利用できることです。通常売却と異なり、本社や店舗、工場などから退去する必要がないため、事業への影響を抑えながら資産を現金化できます。
リースバックは融資ではなく資産の売却によって資金を得る方法でもあります。銀行融資を受けにくい状況でも利用できる可能性があるほか、売却代金の使途も比較的自由です。保有資産の見直しによって、財務状況の改善につながる場合もあります。
法人がリースバックを利用する主なメリットは、次のとおりです。
- 不動産を売却した後も移転せず同じ場所で事業を継続できる
- 不動産の売却によってまとまった事業資金を確保できる
- 業績悪化などで銀行融資が難しい場合でも利用できる可能性がある
- リースバックで得た資金は運転資金や返済など幅広い用途に使える
- 固定資産を現金化することで手元資金とキャッシュフローを改善できる
- 資産・負債の圧縮によって財務指標の改善につながる場合がある
- 契約内容によっては業績回復後に不動産を買い戻すこともできる
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
不動産を売却した後も移転せず同じ場所で事業を継続できる
リースバックでは、不動産を売却した後に買主と賃貸借契約を結ぶため、本社や店舗、工場をそのまま利用できます。資金を確保するために不動産を手放す場合でも、事業拠点まで変更する必要がない点は、法人にとって大きな利点です。
事業所を移転する場合、新しい物件の取得・賃借費用だけでなく、設備の移設や従業員への対応、取引先への案内も必要になります。店舗では立地の変更が売上に影響し、工場では設備移転に伴って操業を一時停止することもあります。
リースバックならこうした影響を抑え、外形上はこれまでと大きく変わらない状態で事業を継続できます。立地や設備との結び付きが強く、簡単に移転できない事業所を所有する企業ほど適した仕組みになります。
不動産の売却によってまとまった事業資金を確保できる
リースバックでは、保有する不動産を売却することでまとまった資金を確保できます。土地や建物は企業が保有する資産の中でも金額が大きくなりやすく、現金化することで資金繰りに余裕を持たせられる可能性があります。
融資の場合は借りた資金を返済する必要がありますが、リースバックで受け取るのは不動産の売却代金です。売却代金そのものに元本返済や利息の支払いは発生しません。一方で、売却後に物件を利用するための賃料は継続して支払う必要があります。
リースバックでは通常売却より売却価格が低くなることがあります。必要な資金額を確保できるかだけでなく、売却後の賃料負担まで含めて条件を確認することが重要になります。
業績悪化などで銀行融資が難しい場合でも利用できる可能性がある
業績の悪化や既存借入の多さから、銀行融資による資金調達が難しい法人でも、リースバックを利用できる可能性があります。リースバックは融資ではなく不動産の売買取引であり、金融機関による融資審査とは判断基準が異なります。
ただし、「融資ではない=審査がない」わけではありません。リースバック会社は、不動産の価値や流動性、売却後の賃料を継続して支払えるかを確認したうえで、買取や契約の可否を判断します。業績が悪ければ無条件で利用できるわけではありません。
銀行から希望額を借りられない場合でも、価値のある不動産を保有していれば別の選択肢になり得る、という位置付けで考えるとよいでしょう。
リースバックで得た資金は運転資金や返済など幅広い用途に使える
リースバックで受け取る資金は借入金ではなく、不動産を売却した対価です。一般的な融資のようにあらかじめ特定の資金使途を設定する必要がなく、企業の状況に応じて幅広い目的に活用できます。
仕入代金や人件費などの運転資金、既存借入の返済、設備投資、税金の支払いが典型例です。複数の支払いが重なっている場合には、売却代金をそれぞれに振り分けることもできます。
ただし、資金使途が自由だからといって、売却代金を短期間で使い切ってしまうと、その後の賃料負担が資金繰りを圧迫するおそれがあります。売却後に必要となる資金まで考慮し、事業計画に沿って活用することが大切です。
固定資産を現金化することで手元資金とキャッシュフローを改善できる
法人が不動産を所有していても、その価値を日々の支払いに直接利用することはできません。リースバックによって固定資産を現金化すれば、仕入代金や人件費、外注費などの支払いに充てられる資金が増え、短期的なキャッシュフローの改善につながります。
通常売却でも不動産を現金化できますが、事業で使用している不動産を売却すれば移転が必要になります。リースバックは継続利用を前提としているため、事業に必要な資産の使用を続けながら流動性の高い現金へ転換できる点に特徴があります。
一方、売却後には賃料という新たなキャッシュアウトが生じます。リースバック前後の収支を比較し、手元資金が増える短期的な効果だけでなく、中長期的なキャッシュフローへの影響も確認しておきましょう。
資産・負債の圧縮によって財務指標の改善につながる場合がある
リースバックによって保有不動産を売却すると、これまで貸借対照表に計上されていた固定資産が減少します。売却代金を借入金の返済に充てれば負債も圧縮でき、総資産の縮小や自己資本比率などの財務指標の改善につながる場合があります。
こうした資産を貸借対照表から切り離す考え方は、一般に「オフバランス化」と呼ばれます。企業が保有する資産を効率化し、資本効率の向上を図る目的で検討されることがあります。
ただし、リースバックを行えば必ずオフバランス化できるとは限りません。契約内容や適用する会計基準によって会計処理は異なります。また、企業会計基準委員会(ASBJ)は「リースに関する会計基準」を公表しており、リースに関する会計処理の見直しも行われています。
財務指標の改善やオフバランス化を目的としてリースバックを利用する場合は、最新の会計基準を確認したうえで、公認会計士や税理士などの専門家へ相談することが重要です。
契約内容によっては業績回復後に不動産を買い戻すこともできる
リースバックでは、契約内容によって売却した不動産を将来買い戻せる場合があります。一時的な資金不足を解消するために不動産を売却し、事業の収益や資金繰りが回復した段階で再び自社所有に戻す、という活用が考えられます。
ただし、リースバックを利用したからといって、当然に買い戻す権利が与えられるわけではありません。買い戻しを前提とする場合は、契約時に再売買の条件を明確にしておく必要があります。買い戻せる期間や価格、手続きは必ず確認しておきましょう。
買い戻し価格は、当初の売却価格と同額になるとは限りません。将来の資金計画を立てる際には、毎月の賃料に加えて買い戻しに必要な資金も考慮する必要があります。
法人がリースバックを利用するデメリットは売却後の賃料負担や売却条件
法人向けリースバックには資金確保と事業継続を両立できるメリットがある一方、売却後のコストや不動産の所有権を失うことによるデメリットもあります。特に注意したいのは、これまで自社所有だった不動産に毎月の賃料が発生する点です。
リースバックでは通常の不動産売却と比べて売却価格が低くなる場合もあります。将来買い戻す場合も、当初の売却価格より高い金額が必要になる可能性があるため、目先の資金確保だけで判断するのは避けましょう。
法人がリースバックを利用する際に押さえておきたい主なデメリットは、次のとおりです。
- 不動産を所有していたときにはなかった毎月の賃料負担が発生する
- リースバックの売却価格は通常の不動産売却より低くなる場合がある
- 売却価格や利回りなどを基に賃料が設定され周辺相場より高くなる場合がある
- 不動産を買い戻す際の価格が売却価格より高くなる可能性がある
- 所有権を失うため改修や改築に所有者の同意が必要になる場合がある
それぞれのデメリットを確認していきましょう。
不動産を所有していたときにはなかった毎月の賃料負担が発生する
自社所有の不動産は、ローンを完済していれば毎月の賃料を支払う必要がありません。しかしリースバック後は買主が不動産の所有者となり、自社は賃借人として利用するため、毎月の賃料が新たな固定費として発生します。
リースバックによって一時的に多額の現金を確保できても、売却後の収益に対して賃料負担が大きすぎれば、かえって資金繰りを悪化させる可能性があります。業績悪化による資金不足を理由に利用する場合は特に、契約後も継続して賃料を支払えるかの検討が欠かせません。
資金調達額だけでなく、月々の賃料と契約期間から将来の支払総額も確認しておきましょう。リースバックは「いくら調達できるか」と「その後いくら支払うか」を必ずセットで考える必要があります。
リースバックの売却価格は通常の不動産売却より低くなる場合がある
リースバックでは、一般的な不動産売却よりも売却価格が低くなる場合があります。買主は不動産を取得しても売主との賃貸借契約が続くため、取得後すぐに自由に利用したり、第三者へ引き渡したりできるとは限りません。こうした制約も買取価格に織り込まれます。
通常売却であれば、購入後の利用方法にリースバック特有の制約がありません。売却後も自社で使用する必要のない不動産なら、リースバックにこだわらず通常売却と比較した方がよいでしょう。
資金確保を急いでいる場合は、提示された価格をそのまま受け入れてしまいがちです。複数社の査定を比較するとともに、通常売却した場合の想定価格も確認し、継続利用する価値と売却価格の差を踏まえて判断する必要があります。
売却価格や利回りなどを基に賃料が設定され周辺相場より高くなる場合がある
リースバックの賃料は、一般的な賃貸物件のように周辺の賃料相場だけを基準として決まるとは限りません。リースバック会社が不動産を取得した価格や期待する利回りを考慮して設定されるため、同じ地域にある類似物件の賃料より高くなる場合があります。
まとまった資金を確保するために高い売却価格を希望すると、その条件が賃料にも影響する可能性があります。売却価格が高ければ必ず有利とは限りません。受け取る金額と、その後継続して支払う金額の両面から条件を見る必要があります。
契約前には月額賃料だけでなく、契約期間を通じた支払総額を試算しておきましょう。周辺の事業用物件へ移転した場合の賃料や移転費用と比較すれば、リースバックを利用する経済的なメリットを判断しやすくなります。
不動産を買い戻す際の価格が売却価格より高くなる可能性がある
リースバックした不動産を将来買い戻す場合、売却時と同じ価格で取得できるとは限りません。買い戻し価格は契約内容によって定められ、当初の売却価格より高く設定されるケースもあります。
「業績が回復したら買い戻せばよい」と考えて利用すると、想定以上の資金が必要になり、買い戻しを断念する可能性があります。買い戻すまでの期間には賃料も支払い続けるため、売却価格と買い戻し価格の差額だけでコストを判断することもできません。
将来的に再取得する意向があるなら、契約前に買い戻し価格の決め方や期限、手続きを確認しておきましょう。価格や条件を書面で明確にしておくことで、将来必要になる資金を事業計画に織り込みやすくなります。
所有権を失うため改修や改築に所有者の同意が必要になる場合がある
リースバック後も同じ不動産を使用できますが、売却した時点で所有権は買主へ移ります。自社は所有者ではなく賃借人になるため、これまで自由に行えた改修や改築について、所有者の承諾が必要になる場合があります。
店舗や工場では特に、事業内容の変更や設備更新に伴って建物の改装が必要になることがあります。リースバック契約後に希望する工事が認められなければ、事業計画に影響する可能性もあるため注意しましょう。
建物や設備に不具合が生じた際、貸主と借主のどちらが修繕費を負担するかも確認しておきましょう。将来的な改修予定があるなら事前にリースバック会社へ伝え、工事の可否や承諾手続き、修繕費用の負担範囲を契約書で確認することが重要です。
法人向けリースバックは融資が難しい場合や事業所を移転できない企業に向いている
リースバックは法人でも利用できますが、不動産を所有している企業すべてに適した資金調達方法ではありません。銀行融資を利用できる場合や、売却後に不動産を使う必要がない場合には、融資や通常売却の方が有利になることもあります。
一方、銀行からの追加融資が難しい場合や、資金は必要でも現在の事業拠点から移転できない場合には、リースバックの特徴を活かしやすくなります。一時的な資金不足を乗り越えたあと、売却した不動産の買い戻しを予定している企業にも選択肢となります。
法人向けリースバックが特に向いているのは、次のようなケースです。
- 業績悪化や借入状況などを理由に銀行から追加融資を受けにくい
- 本社や店舗・工場などを移転せずにまとまった資金を確保したい
- 一時的な資金不足を解消して事業を継続したい
- 借入金を減らして財務状況を改善したい
- 業績回復後に売却した不動産を買い戻したい
自社の状況と照らし合わせながら、それぞれ確認していきましょう。
業績悪化や借入状況などを理由に銀行から追加融資を受けにくい
業績の悪化や既存借入の増加によって銀行から追加融資を受けにくい場合、リースバックが資金確保の選択肢になります。リースバックは金融機関からお金を借りるのではなく、法人が所有する不動産を売却して資金を得る方法だからです。
赤字決算が続いている、すでに複数の借入があるなど、希望する条件で融資を受けられない状況でも、不動産に十分な資産価値があればリースバックを利用できる可能性があります。
ただし、銀行融資を受けられない法人なら必ず利用できるわけではありません。物件の価値や流動性に加え、売却後に賃料を支払い続けられるかも判断材料になります。融資とは異なる資金確保の手段として検討しつつ、契約後の支払い能力まで確認する必要があります。
本社や店舗・工場などを移転せずにまとまった資金を確保したい
事業用不動産を所有していれば、通常売却によって資金を確保することもできます。しかし本社や店舗、工場を売却すると、原則としてその不動産を明け渡さなければなりません。
工場は大型設備の移設が必要になる場合があり、店舗では現在の立地そのものが集客力につながっていることもあります。本社を移転する場合にも、従業員や取引先への影響、住所変更に伴う各種手続きを考慮する必要があります。
リースバックなら、不動産を売却した後も賃借して使用できるため、現在の事業拠点を維持したまま資金を確保できます。「不動産は現金化したいが、その場所を手放すことはできない」という企業ほど、検討する意味が大きくなります。
一時的な資金不足を解消して事業を継続したい
売上や利益が確保できていても、入金と支払いのタイミングがずれることで一時的な資金不足が発生する場合があります。大口案件の受注によって仕入や外注費が先行するケースなど、事業自体に問題がなくても手元資金が不足することはあります。
こうした状況で事業用不動産を所有していれば、リースバックによってまとまった現金を確保し、支払いに対応する方法を検討できます。売却後も同じ物件を使用できるため、資金確保のために事業活動を止める必要もありません。
ただし、慢性的な赤字によって資金不足が続いている場合は注意が必要です。リースバックは保有資産を現金に換える方法であり、事業の収益性そのものを改善する仕組みではありません。一時的な資金不足なのか、構造的な問題なのかを見極めたうえで利用しましょう。
借入金を減らして財務状況を改善したい
借入金が多く、財務状況の改善を図りたい法人にもリースバックが活用されることがあります。保有不動産を売却し、その代金を借入金の返済に充てれば、固定資産と負債を同時に圧縮できます。
借入金を減らすことで利息負担の軽減につながるほか、貸借対照表の構成が変わり、自己資本比率などの財務指標が改善する場合もあります。資産を保有し続けることよりも、資本効率や手元資金を重視する経営方針であれば検討の余地があります。
ただし、売却後の賃料や会計上の取り扱いまで含めて判断する必要があります。財務指標の改善を主な目的とする場合は、リースバックによる効果を事前に試算し、必要に応じて税理士や公認会計士などの専門家にも確認しましょう。
業績回復後に売却した不動産を買い戻したい
現在は資金繰りが厳しくても、将来的な業績回復が見込まれ、不動産を再び所有したい企業にとってもリースバックは選択肢になります。通常売却では一度手放した不動産を同じ条件で取得できる保証はありませんが、リースバックでは買い戻しについてあらかじめ取り決められる場合があります。
一時的な資金不足を不動産の売却代金で補い、業績が回復して資金に余裕ができた段階で買い戻す、という活用方法が考えられます。
ただし、買い戻しの可否や条件は契約によって異なります。将来の買い戻しを前提に利用するなら、買い戻し価格だけでなく、権利を行使できる期間や条件も契約前に確認することが重要です。口頭での確認にとどめず、契約書に定められた内容まで確認しておきましょう。
法人がリースバックを契約する際は賃貸条件や買い戻し条件を確認する
法人がリースバックを利用する際は、売却価格だけでなく、売却後の賃貸借契約や買い戻しに関する条件まで確認することが重要です。高い価格で売却できても、毎月の賃料が過大であったり、希望する期間まで物件を利用できなかったりすれば、事業継続に影響する可能性があります。
本社や店舗、工場など、簡単に移転できない不動産をリースバックする場合は特に注意しましょう。売買契約だけを見るのではなく、売却後も無理なく事業を続けられる契約になっているかを確認します。
法人がリースバックを契約する際に確認しておきたいポイントは、次のとおりです。
- 売却価格だけでなく毎月の賃料や契約期間を含めて判断する
- 普通借家契約と定期借家契約の違いや更新・再契約の条件を確認する
- 将来買い戻す予定がある場合は価格や期限を契約書で確認する
- 修繕費用の負担や改修・改築に関する条件を確認する
- 複数のリースバック会社から査定を受けて契約条件を比較する
契約後に想定外の負担が生じないよう、それぞれ詳しく確認していきましょう。
売却価格だけでなく毎月の賃料や契約期間を含めて判断する
リースバックを検討するときは、不動産をいくらで買い取ってもらえるかに目が向きやすくなります。しかし法人にとって重要なのは、売却時に受け取る金額だけではありません。売却後は賃料を支払いながら事業を継続するため、毎月の賃料や賃貸期間を含めた総合的な判断が必要になります。
売却価格が高くても毎月の賃料負担が大きければ、数年後には資金繰りを圧迫する可能性があります。反対に、売却価格を抑えることで賃料を低く設定できる場合もあるため、必要な資金額とのバランスを考えなければなりません。
売却価格、月額賃料、契約期間を確認し、一定期間利用した場合の賃料総額も試算しておきましょう。短期的な資金調達だけでなく、契約後のキャッシュフローまで含めて条件を比較することが大切です。
普通借家契約と定期借家契約の違いや更新・再契約の条件を確認する
リースバック後に締結する賃貸借契約には、普通借家契約や定期借家契約などがあります。特に注意したいのが定期借家契約です。国土交通省の定期建物賃貸借に関する案内でも説明されているとおり、定期借家契約は契約期間の満了によって終了し、貸主と借主が合意すれば再契約できます。
本社や工場を長期間使用する予定であるにもかかわらず、契約期間や再契約の条件を十分に確認していないと、将来的に退去が必要になる可能性があります。現在の場所で事業を続けることが重要な法人ほど、契約期間に関する確認は欠かせません。
契約前には、契約の種類だけでなく、契約期間、更新または再契約の可否、賃料改定に関する条件、中途解約の取り扱いを確認しましょう。「売却後も使える」という点だけで判断せず、いつまで、どのような条件で利用できるのかを把握しておく必要があります。
将来買い戻す予定がある場合は価格や期限を契約書で確認する
売却した不動産を将来買い戻す予定があるなら、買い戻しに関する条件を契約前に明確にしておきましょう。リースバックを利用しただけで、売主がいつでも自由に不動産を買い戻せるわけではありません。
確認したいのは、買い戻し価格またはその算定方法、買い戻せる期間、手続きの方法です。業績回復後の再取得を事業計画に組み込んでいる場合、条件が曖昧なまま契約すると、必要な時期に買い戻せない可能性があります。
担当者との口頭でのやり取りだけに頼るのは避けましょう。買い戻しを重要な条件とするなら、具体的な内容が契約書にどのように定められているかを確認します。将来必要になる資金を把握するためにも、買い戻し条件の明確化は重要です。
修繕費用の負担や改修・改築に関する条件を確認する
リースバック後は不動産の所有者が変わるため、建物の修繕や改修について自社だけで判断できなくなる場合があります。工場や店舗では特に、設備の入れ替えやレイアウト変更など、事業を続けるなかで建物に手を加える必要が生じることがあります。
どの程度の工事まで自社判断で行えるのか、どのような工事に所有者の承諾が必要なのかを契約前に確認しておきましょう。雨漏りや設備の故障が発生した場合に、貸主と借主のどちらが修繕費を負担するのかも重要です。
将来的な設備投資や店舗改装を予定しているなら、その計画もリースバック会社へ伝えておくと安心です。物件を継続利用できても、必要な改修ができなければ事業に支障が生じるため、契約内容と今後の事業計画を照らし合わせて確認しましょう。
複数のリースバック会社から査定を受けて契約条件を比較する
法人向けリースバックの条件は、依頼する会社によって異なります。同じ不動産でも売却価格や賃料、契約期間、買い戻し条件に差が生じる可能性があるため、1社の提示だけで契約を決めず、複数社を比較することが大切です。
最も高い買取価格を提示した会社が必ず有利とは限りません。売却価格が高くても賃料が高額であれば、長期的な支払負担が大きくなる可能性があります。買い戻しを希望する法人であれば、再取得の条件も重要な比較項目になります。
売却価格、賃料、契約期間、更新・再契約、買い戻しの条件を一覧にして比較すると判断しやすくなります。必要に応じて通常売却や融資などの条件とも比較し、自社の目的に最も適した方法を選びましょう。
法人向けリースバックは融資や不動産担保ローン・通常売却との違いを理解して選ぶ
法人が不動産を活用して資金を確保する方法は、リースバックだけではありません。銀行融資や不動産担保ローンを利用する方法、不動産そのものを通常売却する方法もあり、自社の財務状況や不動産を今後も使用する必要があるかによって適した方法は異なります。
リースバックの特徴は、借入ではなく売却によって資金を確保しながら、売却した不動産を引き続き利用できることです。所有権を維持したい場合や売却後の賃料負担を避けたい場合には、融資などが適している可能性があります。
リースバックと比較しておきたい主な方法は、次のとおりです。
- 銀行融資は不動産を売却せず低コストで資金調達できる可能性がある
- 不動産担保ローンは所有権を維持したまま不動産を資金調達に活用できる
- 通常の不動産売却は継続利用が不要ならリースバックより有利な場合がある
- ファクタリングは不動産を売却せず売掛債権を早期に資金化できる
それぞれの違いを確認し、自社に適した方法を判断しましょう。
銀行融資は不動産を売却せず低コストで資金調達できる可能性がある
銀行融資を利用できる法人であれば、リースバックより先に融資条件を確認する方法があります。融資なら不動産の所有権を手放す必要がなく、リースバック後のような賃料も発生しません。金利や返済期間などの条件によっては、資金を確保するための総コストを抑えられる可能性があります。
銀行融資では企業の業績や財務状況、返済能力をもとに審査が行われます。希望する金額を必ず借りられるわけではなく、業績悪化や既存借入の状況によっては融資を受けられない場合もあります。
銀行から必要な資金を合理的な条件で借りられるなら、無理にリースバックを選ぶ必要はありません。融資が難しい場合や、借入金を増やしたくない場合に、リースバックを比較対象にするとよいでしょう。
不動産担保ローンは所有権を維持したまま不動産を資金調達に活用できる
不動産担保ローンは、法人が所有する土地や建物を担保として融資を受ける方法です。リースバックと同じように保有不動産の価値を資金調達に活用できますが、不動産を売却しない点が大きく異なります。
所有権を維持できるため、リースバックのように売却後の賃料を支払う必要はありません。将来的に不動産を買い戻すための資金を準備する必要もなく、重要な事業用不動産を自社で所有し続けたい法人には選択肢となります。
ただし、不動産担保ローンはあくまで融資であり、元本と利息の返済が必要です。返済できなくなれば担保にした不動産を失う可能性もあります。リースバックと比較する際は、毎月の返済額と賃料の違いだけでなく、借入期間全体の支払額や所有権を維持する必要性も考慮しましょう。
通常の不動産売却は継続利用が不要ならリースバックより有利な場合がある
売却後にその不動産を使用する必要がないなら、リースバックではなく通常売却を選択した方が有利になる可能性があります。通常売却でも不動産を現金化でき、売却後に賃貸借契約を結ばないため、毎月の賃料も発生しません。
リースバックでは、買主が取得後も売主へ物件を貸し続けることを前提として条件が設定されます。そのため通常売却と比べて売却価格が低くなる場合があり、継続利用する必要のない不動産をあえてリースバックする利点は限定的です。
使っていない土地や今後廃止する事業所などであれば、通常売却も含めて検討しましょう。反対に、本社や店舗、工場など移転による事業への影響が大きい不動産であれば、売却後も使用できるリースバックのメリットが活きてきます。
ファクタリングは不動産を売却せず売掛債権を早期に資金化できる
ファクタリングとは、法人が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却し、入金期日前に資金化する方法です。リースバックと同じく資産の売却によって資金を確保する方法ですが、リースバックが主に不動産などを対象とするのに対し、ファクタリングでは売掛債権を活用します。
事業用不動産を所有していない法人でも、取引先に対する売掛債権があれば利用できる可能性があります。不動産の所有権を失ったり、売却後に賃料が発生したりすることもありません。売掛金の入金を待たずに資金を確保したい場合など、短期的な資金繰りへの対応に適しています。
一方、ファクタリングで調達できる金額は保有する売掛債権の金額などに左右され、利用時には手数料がかかります。不動産を活用してまとまった資金を確保したい場合はリースバック、売掛債権を活用して入金を早めたい場合はファクタリングというように、保有資産と必要な資金額、調達目的に応じて使い分けましょう。
法人向けリースバックは査定から売買・賃貸借契約を経て利用を開始する
法人向けリースバックを利用する際は、リースバック会社へ相談したあと、対象となる不動産の査定を受け、提示された売却価格や賃料などの条件を確認します。条件に合意した場合は、不動産の売買契約と売却後に使用するための賃貸借契約を締結し、決済後は賃料を支払いながら同じ不動産を利用します。
通常の不動産売却と異なり、売却価格だけでなく売却後の賃貸条件についても同時に検討する必要があります。買い戻しを希望する場合は、その条件についても契約前に確認しておきましょう。
法人向けリースバックは、一般的に次の流れで進みます。
- リースバック会社へ相談して対象不動産の査定を申し込む
- 売却価格や賃料・契約期間などの条件提示を受ける
- 売買契約と賃貸借契約の内容を確認して契約を締結する
- 売却代金を受け取り賃料を支払いながら不動産を継続利用する
具体的な手続きの流れを順番に確認していきましょう。
リースバック会社へ相談して対象不動産の査定を申し込む
まずはリースバック会社へ相談し、法人が所有する不動産について査定を依頼します。申し込み時には物件の所在地や種類、面積、利用状況などの情報を伝え、必要に応じて登記事項証明書や固定資産税に関する書類を提出します。
査定では、不動産の立地や状態、市場価格をもとに、リースバック会社が買取可能かを判断します。法人の場合、本社ビルや店舗、工場、倉庫など物件の種類が幅広いため、依頼先が対象となる事業用不動産を取り扱っているか事前に確認しておきましょう。
この段階で必要な資金額や希望する利用期間、将来的な買い戻しの予定を伝えておくと、その後の条件調整を進めやすくなります。
売却価格や賃料・契約期間などの条件提示を受ける
査定後は、リースバック会社から売却価格や売却後の賃料が提示されます。このとき、買取金額だけで判断するのではなく、月額賃料や契約期間、更新・再契約の条件をまとめて確認することが重要です。
法人の場合、売却後も本社や店舗、工場を長期間利用する可能性があります。高い売却価格を得られても、賃料負担が大きかったり、希望する期間まで利用できなかったりすれば、事業計画に影響しかねません。
将来的な買い戻しを希望するなら、買い戻しの可否や価格、期限についてもこの段階で確認します。可能であれば複数社から条件を取得し、売却価格だけでなく契約全体を比較しましょう。
売買契約と賃貸借契約の内容を確認して契約を締結する
提示された条件に合意したら、不動産を売却するための売買契約と、売却後も利用を続けるための賃貸借契約を締結します。リースバックでは2つの契約が密接に関係するため、双方の内容を確認することが重要です。
売買契約では売却価格や決済日を確認し、賃貸借契約では賃料、契約期間、更新・再契約、中途解約、修繕費用の負担を確認します。買い戻しについて取り決める場合は、その条件が書面にどのように記載されているかも確認しましょう。
契約内容によっては、売却後の事業運営に長期間影響します。不明な条項があるならそのまま契約せず、リースバック会社へ説明を求め、必要に応じて弁護士や税理士などの専門家へ相談することも検討しましょう。
売却代金を受け取り賃料を支払いながら不動産を継続利用する
契約後に決済が行われると、法人は不動産の売却代金を受け取ります。同時に所有権が買主へ移転し、その後は賃貸借契約に基づいて賃料を支払いながら、これまでと同じ不動産を利用します。
受け取った売却代金は、運転資金や借入金の返済、設備投資など、企業の目的に応じて活用できます。物件から退去する必要がないため、通常であれば移転に伴って発生する業務停止や設備移設などの影響を抑えられます。
一方、契約後は毎月の賃料を継続して支払う必要があります。買い戻しを予定しているなら、そのための資金も準備しなければなりません。リースバックの実行をゴールとせず、その後の資金繰りを計画的に管理することが重要です。
法人向けリースバックに関するよくある質問
法人向けリースバックでは、対象となる不動産の種類だけでなく、売却代金の使い道や会計・税務上の取り扱いなど、法人ならではの疑問も生じます。代表者個人が所有する不動産を活用したい場合や、複数の不動産を保有している場合は、どのように取り扱われるのかも確認しておきたいところです。
法人向けリースバックについてよくある質問は、次のとおりです。
- 法人向けリースバックで調達した資金の使い道に制限はある?
- 法人名義ではなく代表者個人名義の不動産でも利用できる?
- 住宅ではなく店舗や工場だけでもリースバックできる?
- リースバックすると法人の会計や税金はどうなる?
- 複数の不動産をまとめてリースバックできる?
それぞれ回答します。
法人向けリースバックで調達した資金の使い道に制限はある?
法人向けリースバックで受け取る資金は、融資による借入金ではなく、保有する不動産などを売却した代金です。そのため、一般的には銀行融資のように設備資金や運転資金などの資金使途があらかじめ限定されるものではありません。
たとえば、仕入代金や人件費などの運転資金、新規設備への投資、既存の借入金の返済など、企業の状況に応じた用途に活用できます。複数の用途に振り分けることも可能です。
ただし、リースバックによって資金を確保しても、売却後は賃料やリース料の支払いが続きます。調達できる金額だけを見るのではなく、資金を何に使い、その後のキャッシュフローがどう変化するのかまで考えておくことが重要です。
法人名義ではなく代表者個人名義の不動産でも利用できる?
代表者個人が所有する不動産についても、リースバック会社によっては取り扱っている場合があります。代表者が所有する自宅の一部を法人の事務所として利用しているケースなどが考えられます。
ただし、法人所有の不動産をリースバックする場合とは契約関係が異なります。不動産の売主は所有者である代表者個人となるため、法人が直接自社資産を売却する取引と同じようには扱えません。
個人が受け取った売却代金を法人の事業資金として使用する場合には、法人と代表者との間で適切な処理が必要になります。個人名義の不動産を法人の資金確保に活用したいなら、対応可能なリースバック会社へ確認するとともに、会計・税務上の処理について税理士などへ相談しましょう。
住宅ではなく店舗や工場だけでもリースバックできる?
店舗や工場などの事業用不動産でもリースバックを利用できる場合があります。法人向けのリースバックでは、本社ビルやオフィスのほか、店舗、工場、倉庫、社員寮など、さまざまな種類の不動産が取り扱われています。
店舗や工場は特に、移転によって営業や生産活動に大きな影響が生じる可能性があります。リースバックなら不動産を売却した後も同じ場所を使用できるため、事業活動を継続しながら資金を確保できます。
ただし、取り扱える物件の種類やエリア、最低買取金額はリースバック会社によって異なります。特殊な設備を備えた工場などでは条件が限定される可能性もあるため、査定を依頼する前に対象物件を確認しておきましょう。
リースバックすると法人の会計や税金はどうなる?
法人がリースバックを利用すると、所有していた不動産を売却するため、売却価格と帳簿価額などに応じて売却損益が発生します。売却後は賃貸借契約に基づいて賃料を支払うことになるため、リースバックの前後で会計処理も変わります。
税金については、売却する資産の種類や法人の状況によって取り扱いが異なります。国税庁によると、課税事業者が事業用資産を譲渡した場合は原則として消費税等の課税対象となる一方、土地や借地権の譲渡は非課税です。
不動産のリースバックでは土地と建物を一括して売却するケースもあるため、売却価格だけでなく、売却損益や消費税、売却後の賃料を含めて確認する必要があります。具体的な会計処理や税額は契約内容や法人の状況によって異なるため、契約前に税理士や公認会計士などの専門家へ確認しておくと安心です。
複数の不動産をまとめてリースバックできる?
複数の不動産を所有している法人では、本社や店舗、工場、倉庫などをまとめてリースバックできる場合があります。ただし、対応できる物件の種類やエリア、取引金額などの条件はリースバック会社によって異なります。
複数の不動産を対象にすれば、1物件だけを売却する場合より多くの資金を確保できる可能性があります。一方で、すべての物件を売却する必要があるとは限りません。必要な調達額に応じて、一部の不動産だけを対象にする方法も考えられます。
また、物件ごとに査定価格や売却後の賃料、事業上の重要性も異なります。複数物件のリースバックを検討する場合は、一括での売却を前提とせず、どの資産を対象にすれば必要な資金を確保しつつ、その後の固定費を抑えられるかという視点で比較するとよいでしょう。



